私たちの知らないところで起きている飢餓問題の現状を知ろう。
2025年07月08日
飢饉とは、自然災害や紛争などによって食糧を得られない状況を意味する。一方「飢餓」とは、食糧の有無を問わず、食糧へのアクセスがなく、継続的に栄養状態に深刻な問題を抱えた状態を意味している。
2025年6月現在においてもスーダンは世界で唯一、飢餓(IPCフェーズ5)が認定される国である。北ダルフール州ザムザム避難民キャンプで初めて確認されて以来、すでに国内10地域に拡大し、さらに17地域が危機に瀕している。その他にはガザ地区でも、約47万人が壊滅的な食糧不安に直面し、7万1000人の子どもが急性栄養失調の緊急治療を必要としている。また南スーダン、マリ、ハイチなどが飢餓のリスク地域に挙げられる。
これらの飢餓は「極度の食糧不足」が一定の基準を満たした場合にのみ宣言される最も深刻な人道危機である。具体的には、日々の死亡率の増加、世帯の食糧不足、子どもの急性栄養失調が深刻なレベルに達した場合に該当する。飢餓の発生は予測可能であり、適切な資源、政治的意志、そして迅速な対応があれば予防さえ可能である。しかし、実際には紛争、異常気象、経済的混乱、そして人道支援の不足が複合的に影響し、多くの地域で深刻な飢餓を引き起こしている。
国連世界食糧計画(WFP)は、こうした飢餓の撲滅を使命の中心に据えており、2024年には世界中の124カ国で1億2400万人に食料支援を提供した。2022年のソマリアでは、大規模な飢餓の回避に成功した実績がある。現在WFPは、スーダンをはじめとする飢餓危機地域において、毎月数百万人に食料と栄養支援を届けている。また食料支援だけでなく、早期警報システムの構築、農業生産支援、技能訓練、土地回復などを通じて、地域社会のレジリエンス(回復力と柔軟性)を高める取り組みを行っている。これらの活動は、2020年にWFPがノーベル平和賞を受賞した際にも高く評価された。
飢餓は単なる一時的な飢えの問題ではなく、人々の命を奪い、社会基盤を破壊し、長期的なトラウマを残す。21世紀に入ってからは、ソマリア(2011年)、南スーダン(2017年)、スーダン(2024年)の3カ国で、飢餓が正式に確認された。
2025年時点で、WFP支援対象国だけでも3億4300万人が深刻な飢餓に苦しみ、そのうち190万人は命の危機に直面している。飢餓を終わらせるためには、資源、技術、協調行動、そして確固たる政治的意志が不可欠だ。
WFPは国際社会の連携のもと、草の根の活動から政策提言に至るまで多面的なアプローチで飢餓と闘っている。個人にもできることは多く、情報発信、支援への参加、寄付などを通じて、飢餓撲滅への行動を後押しすることが求められている。
飢餓は止められる。飢餓のない世界は実現可能である。今こそ、国際社会が一致団結し、「誰一人取り残さない」未来に向けて動き出す時である。
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