私たちの知らないところで起きている飢餓問題の現状を知ろう。
2025年07月08日
現代の人道支援活動において、AIは時間とコストの節約を通じて支援の効率と効果を飛躍的に高めている。ただし、AIだけで飢餓を完全に撲滅することは不可能であり、学術的知見、人間の判断、資金の投入などとの連携が不可欠となる。
AIは現在、以下のような形で実践的に活用されている。まず災害時は、AIがドローン画像を解析し、従来は数週間かかっていた被害評価を数時間で実施可能にした。これにより、被災地への支援到達が迅速化される。支援対象者の特定、配布リストにおける重複排除などにも活用され、正確かつ公平な支援が実現されている。また食糧支援の物流、調達経路の最適化、農業における作物選定や害虫検知などでも成果を上げている。
特に2022年、ハリケーン・フィオナがカリブ海を襲った際に使用されたドローン画像分析ツール「DEEP」の活躍が目覚ましい。これは従来3週間かかっていた被害評価を数時間で完了させ、迅速な対応を可能にした。またGoogle ResearchとWFPが共同開発した「SKAI」は、2023年のトルコ・シリア地震や2022年のパキスタン洪水において活用され、手作業の13倍の速さで評価を行い、77%のコスト削減を実現した。
またWFPの受益者データベースにおける重複や異常を99.99%の精度で検出する「エンタープライズ重複排除ソリューション」や、支援物資の調達・保管・配送を最適化する統計分析ツール「SCOUT」の導入も成果を上げた。SCOUTは、西アフリカでのソルガム調達計画において、2024年に200万ドルのコスト削減を実現した。
これらのようにAIは飢餓撲滅に向けた強力な補助的ツールである。ドローン、機械学習、データ分析といった技術を統合的に活用することで、迅速かつ的確な支援が可能となる。ただし、AIの力を最大限に引き出すには、倫理的配慮と人間の判断を欠かすことはできない。技術、人間、資源が一体となってこそ、「貧困と飢餓」という地球規模の課題に本質的な変革をもたらすことになる。
Image by DJI-Agras from Pixabay