私たちの知らないところで起きている飢餓問題の現状を知ろう。
2025年08月13日
米国ニューヨーク国連本部開催、経済社会理事会(ECOSOC)は2025年7月22日、2021年から2023年にかけての世界的な食料価格高騰の要因と影響、その解決策について検討した。当然、貧困と飢餓の撲滅と対策もその背景となる。例えば国連食糧農業機関(FAO)は、食料価格上昇が最も深刻に影響を及ぼすのは低所得国であると指摘しており、食料に家計の多くを費やす国々では、貧困と飢餓の悪化が顕著となっている。
事実、食料インフレ率は世界的に上昇し2023年1月には13.6%、同時期の総合インフレ率を大きく上回った。こうした価格高騰の背景には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大、ウクライナ戦争、異常気象頻発の連鎖によるサプライチェーンの混乱がある。加えて、エネルギー価格の高騰、各国の財政支出の増加、金融緩和政策も複合し、食料価格上昇となっている。
とりわけ低所得国における影響は深刻である。2023年5月には、これらの国々で食料インフレ率が30%に達し、世界の平均を大きく上回った。人口にして、15億人(低所得国の65%、低中所得国の61%)以上が、10%を超える食料インフレに苦しんだ。
いうまでもなく高水準のインフレは、貧困と飢餓を加速させる。このインフレは低所得層に直接的打撃を与えており、中程度から重度の食料不安に直面した人々が3.5%、重度の食料不安に陥った人々が1.8%増加した。この数字の裏には、社会構造の不平等、ジェンダー格差の問題が絡まっている。
懸念すべき課題は、近年の国際的な商品価格の下落は、決して低所得国における消費者価格の低下にはつながらないことである。貧困と飢餓に対して脆弱な位置に置かれた人々への影響が長期化している状況は、国際社会の掲げる貧困と飢餓の撲滅への取り組みにおいて大きな障壁となる。
FAO発表予定の「2025年版食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」報告書は、農業食料システムの変革を通じた耐性強化と政策対応の必要性を強調している。社会的保護制度の強化、信頼性ある金融政策、農産物の生産性と回復力を向上させる研究開発、インフラ整備、情報システムへの投資など、多面的かつ協調的な政策が求められる。飢餓と貧困の根本的な解決と将来を見据えるための動きが始まっている。